抄録
シロイヌナズナのフォトトロピン(phot1, phot2)は、青色光に依存した光屈性、葉緑体の光定位運動、気孔開口の青色光受容体である。これらの青色光に依存した植物の応答反応には、細胞内のCa2+がセカンドメッセンジャーとして働いている可能性が示唆されている。我々は、青色光による細胞質Ca2+濃度変化とそれに対するフォトトロピンの関与を明らかにするために、Ca2+感受性発光タンパク質であるエクオリンの遺伝子を導入したシロイヌナズナ(野生型、phot1, phot2 突然変異体, phot1 phot2二重突然変異体)を作成し、以下の実験を行った。
野生型のロゼット葉に0.1-250 μmol m-2 s-1の青色光をそれぞれ10秒間照射したところ、いずれの場合も細胞質Ca2+濃度上昇を反映した一過的なエクオリンの発光が観察された。この青色光に依存した細胞質Ca2+濃度上昇についてそれぞれの変異体を用いて解析したところ、phot1は0.1-50 μmol m-2 s-1で、phot2は1-250 μmol m-2 s-1で働いていることが分かった。青色光に依存したCa2+濃度上昇に対するphot1の貢献度は、phot2の有無によって影響を受けなかったことから、phot1とphot2はそれぞれ独立して働いていることが示唆された。本発表では、以上の結果に合わせて、Ca2+チャネルブロッカーなどの薬剤の影響についても報告する。