抄録
青色光は孔辺細胞の細胞膜H+-ATPaseを活性化して気孔開口を引き起こす。最近、私達は気孔開口の青色光受容体がphotであることをシロイヌナズナの変異体を用いて明らかにした。しかしながら、シロイヌナズナの孔辺細胞プロトプラスト(AtGCPs)を用いた青色光反応の解析は行なわれていない。本研究ではAtGCPsの大量調製法を確立し、AtGCPsにおける青色光反応について調べた。AtGCPsはロゼット葉表皮からセルラーゼ処理により単離し、Histopaque(比重1.077)により精製した。精製したプロトプラストは約98%が孔辺細胞であり、収量は約1,000枚の葉から約3.0 x 106細胞(蛋白量約50 μg)であった。ウエスタン解析により細胞膜H+-ATPase、phot1、phot2がAtGCPsに発現していることを確認した。そこで、AtGCPsにおける青色光(100 μmol/m2/sec、30秒)によるH+放出反応を調べた。その結果、H+放出は青色光照射開始から2分で最大となり10分程度持続した。さらに、phot二重変異体のGCPsを用いて調べたところ、細胞膜H+-ATPaseは正常に発現しているが青色光によるH+放出反応は全く見られなかった。このことはphot1とphot2が青色光受容体として機能していることを示している。現在、青色光による細胞膜H+-ATPaseのリン酸化の解析を進めている。以上の結果はソラマメGCPsで得られた結果を追認するとともに、シロイヌナズナ変異株等を用いた気孔の青色光反応の生化学的解析が可能であることを示している。