抄録
青色光は孔辺細胞の細胞膜H+-ATPaseのリン酸化により活性化し、気孔開口の直接の原因となるK+取り込みの駆動力を形成する。最近、我々は気孔開口の青色光受容体がphotであることをシロイヌナズナのphot変異体を用いて明らかにした。photはN末側にLOVドメイン、C末端にキナーゼドメインをもち、青色光により自己リン酸化することが知られている。しかしながら、孔辺細胞におけるphotの生化学的解析は行なわれていない。本研究ではソラマメ孔辺細胞におけるphotのリン酸化反応について調べた。ソラマメにはvfphot1とvfphot2 の少なくとも2つのアイソフォームが発現していた。32Pラベルした孔辺細胞プロトプラストを用いてvfphotのリン酸化状態を調べたところ、vfphotは青色光照射によりただちにリン酸化され、照射開始から約1分で最大となり照射後20分でもとのレベルまで脱リン酸化された。一方、細胞膜H+-ATPaseのリン酸化は約5分で最大となり、H+-ATPaseの活性化に先立ってvfphotがリン酸化されることが明らかとなった。また、vfphotとH+-ATPaseのリン酸化の青色光強度依存性は一致しており、キナーゼ阻害剤やブラビン蛋白質阻害剤に対する感受性も一致していた。以上の結果より、vfphotは気孔の青色光受容体として機能しており、vfphotのリン酸化は光受容の初期過程において重要な役割を果たしていることが示唆された。