日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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シロイヌナズナの根における光屈性とコルメラ細胞内デンプン量の変化
*山崎 裕藤井 伸治小林 啓恵高橋 秀幸
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p. 689

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抄録
 根は水分屈性を発現する能力を有するが、地球上では重力屈性が水分屈性をマスクする。エンドウやキュウリの根では、したがって、突然変異、クリノスタット、宇宙実験などで重力屈性を消去させることによって水分屈性を発現させることができる。一方、われわれは、最近シロイヌナズナやダイコンの根が水分勾配の存在下で水分屈性を強く発現させるのは、水ストレスがコルメラ細胞中のデンプンを分解し、重力応答性を低下させるためであることを明らかにした。シロイヌナズナの根は、重力屈性や水分屈性だけでなく光屈性をも発現させる。そこで本研究では、シロイヌナズナの根における光屈性と重力屈性の相互作用をコルメラ細胞内デンプン量の変化に注目して解析した。その結果、コルメラ細胞のデンプン量が、光屈性に先立って有意に減少することを見出した。すなわち、根は、白色光および青色光の一方向照射によって負の光屈性を、赤色光の一方向照射によって正の光屈性を示した。この光屈性を誘導する一方向照射によってコルメラ細胞中のデンプン量は減少したが、同軸上双方向照射では光屈性が誘導されず、デンプン量も減少しなかった。これらのことから、シロイヌナズナの根は、水分屈性だけでなく光屈性を発現させる場合にも、コルメラ細胞中のデンプン量を減少させることによって重力感受性を低下させ、重力屈性による干渉を小さくする機構を持つものと考えられる。
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© 2003 日本植物生理学会
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