抄録
我々は高等植物の花茎の重力屈性の分子機構を理解するために、変異体をシロイヌナズナから単離し解析している。劣性変異体zigzag (zig)-1は重力屈性異常に加えて、花茎が節で折れ曲がりジグザグな形態を示す。そしてZIGは液胞への小胞輸送に関与するSNAREの1つAtVTI11をコードしていた。そこで、形態形成や重力屈性における液胞への小胞輸送の機能を詳しく理解するために、zig-1のサプレッサー変異体を多数分離し解析を進めている。zig suppressor 1(zip1)優性変異はzig-1の形態と重力屈性異常を完全に抑制する。マッピングの結果、zip1ではAtVTI12に一塩基置換変異が見出された。zip1変異型AtVTI12と野生型AtVTI12 のゲノム断片をzig-1に形質導入した結果、前者では形態と重力屈性の異常が完全に相補され、後者では相補されなかった。この結果はzip1の原因遺伝子がAtVTI12であることを示している。AtVTI12はZIG/AtVTI11のホモログであり、アミノ酸レベルで約60%の相同性を示す。しかし、このサプレッサー変異株の存在から、両者は異なる機能をもつSNAREと推定される。そこでzip1がなぜzigの重力屈性および形態の異常を相補できるのかを明らかにするための解析を現在進めている。