抄録
動物細胞において、エンドサイトーシスには様々な分子が関わっていることが明らかになっている。しかし、高等植物におけるエンドサイトーシスは、つい最近までその実態が明らかにされてこなかった。我々は、植物のエンドサイトーシスを明らかにする目的で、蛍光色素であるFM4-64を使用し、タバコ培養細胞(BY-2)におけるエンドサイトーシスの様子を観察した。BY-2をショ糖存在下またはショ糖飢餓下で培養し、FM4-64を与えた。FM4-64は細胞膜に吸収され、その後小胞を経由して液胞に到達した。ところが、ショ糖飢餓下で培養したBY-2にパパイン型システインプロテアーゼの阻害剤であるE64dを与えたところ、液胞に到達するFM4-64は減少し、サイトゾルにFM4-64で染色される大量の小胞が蓄積した。この小胞は酸性オルガネラを染色する蛍光色素であるキナクリンで強く染色された。ショ糖存在下で培養したBY-2では、E64dを与えても小胞の蓄積は全く見られなかった。このことから、ショ糖飢餓下のBY-2においてのみ、E64dはエンドサイトーシスを抑制する働きがあることが明らかとなった。様々なプロテアーゼ阻害剤を用いた実験から、このエンドサイトーシスに関わるパパイン型システインプロテアーゼは、アルギニンやリジンのC末端側を切断するエンドペプチダーゼであると考えられた。