抄録
演者らは、小胞体膜タンパク質チトクロムB5とRFPの融合タンパク質をタバコ培養細胞BY-2に発現させた場合、細胞内にRFP融合タンパク質が凝集したオルガネラ(RV)が形成され、それらが細胞増殖の定常期に液胞へ移行し、液胞内腔にRFPが検出されるという現象を見出している。まず、RVを特定するために、様々な細胞小器官に対するマーカー抗体を用いて間接蛍光抗体染色を行った。その結果、RFPの蛍光は各種の細胞小器官と異なる局在を示したことから、RVはこれらのオルガネラではないと考えられた。次いで、抗RFP抗体を用いた免疫電顕および微細構造観察を行い、RVは脂肪粒のような構造体であると考えられる結果を得た。RVの液胞移行を誘導する条件を検討した結果、ショ糖飢餓条件で、RFPの蛍光が液胞に観察された。ショ糖飢餓条件下で、システインプロテアーゼの阻害剤(E-64)を加えショ糖飢餓条件下で培養した場合、蛍光顕微鏡下においてRVは液胞移行せずに核の周辺に見られ、電顕観察により核周辺の細胞質に多くオートリソソームが観察された。この細胞の細胞質中にRVが存在しないことから、RVはオートリソソーム内に存在すると考えられ、RVはオートファジーにより液胞内へ取り込まれることが示唆された。現在、ショ糖飢餓条件下でRVの液胞移行を阻害する遺伝子の探索を行っており、その結果についても報告したい。