日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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原形質流動に関与する高等植物ミオシン(myosin XI)の光ピンセット法を用いた一分子レベルでの解析
*富永 基樹小嶋 寛明横田 悦雄織井 秀文中森 鈴奈片山 栄作Michael Anson新免 輝男大岩 和弘
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p. 728

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抄録
植物細胞の原形質流動は、アクトミオシン系が関与する最も速い運動のひとつである。我々は、この運動に関わる175kDaミオシンをタバコ培養細胞BY-2から単離精製し、分子レベルでの解析を行った。
シークエンス解析の結果、175kDaミオシンはクラスXlに属していた。電子顕微鏡観察から、175kDaミオシンは大きな2つの頭部と、細いストーク、これにつながる球状尾部を持ち、形態的にはmyosin Vに類似していた。このミオシンのactin-activated ATPase活性は最大80 molecules/sec/headであり、myosin Vに比べ非常に高い活性を示した。
光ピンセットによる1分子レベルでの運動解析の結果、175kDaミオシンは35nmステップを刻みながら、アクチンフィラメント上でプロセッシブ(連続的な)運動を行った。この1ステップは、1分子のATP分解に対応していた。1分子での発生張力は、0.5pN(骨格筋ミオシンの1/10)と非常に弱かったが、速度は7μm/secであり既知のプロセッシブモーター中で最速であった。
運動の詳細な解析から、このミオシンの律速はADPの放出であり、myosin Vに比べ放出の速度が速いために高い運動速度を持つことが示唆された。以上の結果から、hand-over-hand model(歩くモデル)に従い、ミオシンの運動機構について議論する。
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© 2003 日本植物生理学会
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