抄録
インゲン根粒菌Rhizobium etli CE3は本来の宿主ではないミヤコグサLotus japonicusに感染し、根粒形成を行わせることが知られている。しかし、インゲン根粒菌による根粒は早期老化型であり、植物の生長補助をほとんど行わない。我々はミヤコグサの根粒形成において、ミヤコグサ根粒菌Mesorhizobium lotiは保有するがインゲン根粒菌は保有しない未同定の共生遺伝子があるものと考え、異種間相補実験によってクローニングを試みた。
ミヤコグサ根粒菌整列化コスミドライブラリーのクローンをそれぞれインゲン根粒菌に導入し、ミヤコグサに感染させて植物の生長を評価している。現在、全480クローンのうち約半数を評価した段階で、標的とする遺伝子は同定できていない。しかし興味深いことに、ミヤコグサ根粒菌における2つのゲノム領域がそれぞれインゲン根粒菌による根粒形成に負の影響を与えることが明らかになった。これらのうち一方の領域を含むインゲン根粒菌は黒点様の超早期老化型根粒を多数作り、もう一方は根粒を全く作らない。該当クローンの派生物や周辺クローンを用いて、これらの存在位置を6.7kbpおよび7.6kbp以内に限定した。それぞれの領域は7個と11個のORFを含むが、既知の共生遺伝子を含んでいないことが分かった。現在これらの形質を与える遺伝子を同定し、根粒形成における機能について検討を行っている。