抄録
マメ科植物は根粒という特別な器官を形成して、根粒菌と共生窒素固定を行う。根粒形成に関わる植物側因子の解明は、マメ科のモデル植物ミヤコグサやタルウマゴヤシ等を用いた近年の分子遺伝学的研究の進展により可能となったが、依然としてそのほとんどは未解明であり、百以上あると推定されている根粒形成に関与する変異体の遺伝子座も網羅されてはいない。そこで我々は、イネで行われた様な内生レトロトランスポゾンを利用した遺伝子タギング系の作成を視野に入れつつ、植物側因子解明の新たな材料を作出することを目的として、ミヤコグサ培養細胞由来の再生植物個体群から共生変異体を単離した。
胚軸由来カルスと、Gifu培養細胞から、Gifu889系統、Miyakojima446系統の再生個体を得た。このうち種の取れたGifu 700系統、Miyakojima 224系統に関し、無窒素条件下での根粒形成試験を行い、根粒菌M.loti Tono接種の1ヶ月後、窒素欠乏を呈する個体を選抜した。得られた変異体候補を野生型の植物と交配し、F2遺伝子分析を行ったところ、12系統について3:1の分離が確認された。現在、他の変異体候補に関する遺伝子分析を進めると共に、変異遺伝子のゲノム上への位置づけ等を行っている。 Hirochika H et al. (1996)Proc Natl Acad Sci U S A. 93(15):7783-8.