抄録
植物の硝酸イオン吸収は、根細胞膜上の硝酸トランスポーター(NRT)によって行われていると考えられている。本研究では、オオムギの高親和性NRT(NRT2)の抗体を作製し、オオムギ根におけるNRTタンパク質の発現解析を行ったので報告する。
方法:大腸菌にNRT2のC末端部分を大量発現させ、これをウサギに免疫し抗体を得た。播種後無窒素で1週間育てたオオムギ幼植物に、10mMのKNO3を供与し、24時間後に根を採取した。根を摩砕抽出後超遠心でミクロソーム画分、さらに二層分配法で細胞膜(PM)画分を得た。ミクロソーム画分とPM画分から可溶化したタンパク質を免疫ブロッティングに供した。また、指標酵素によりオルガネラの純度検定を行った。
次に、オオムギ幼植物に1mM及び10mMのKNO3を供与し、経時的に根を採取した。摩砕抽出後ミクロソーム画分を調製し、免疫ブロッティングに供した。また、同様にKNO3供与した植物に100mM15NO3-を一定時間与え、15N吸収量を測定した。
結果・考察:ミクロソーム画分、PM画分の免疫ブロッティングとオルガネラの検定から、NRTタンパク質が細胞膜に存在することが確認できた。経時的に採取したミクロソームの免疫ブロッティングでは、NRTタンパク質は各時間とも10mM KNO3を供与したオオムギ根に強く発現していたのに対し、15NO3-吸収活性は1mM KNO3供与のオオムギにおいて高かった。以上より、NRT2は翻訳後のレベルで制御されていることが示唆された。