日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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葉緑体ndhBの発現に欠陥のあるシロイヌナズナ核変異株crr2の単離と機能解析
*橋本 美保子遠藤 剛Gilles Peltier田坂 昌生鹿内 利治
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p. 9

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抄録
葉緑体NAD(P)H dehydrogenase (NDH)は、PS I周辺循環的電子伝達に機能する複合体である。我々はNDHの生理的意義を明らかにするため、NDH活性を欠くシロイヌナズナの核遺伝子変異株crr2(crr2-1, crr2-2)を単離した。光合成の主要複合体のウエスタン解析を行った結果、crr2では両光化学系及びCytb6fのサブユニットの蓄積量に影響は見られなかったが、NdhHタンパク質量が著しく減少していた。Map-based cloningによりCRR2は9つのPPRモチーフを含む葉緑体タンパク質をコードする事を確認した。PPRタンパク質はオルガネラ遺伝子の転写後発現制御に関わるという報告から、CRR2はNDH遺伝子の発現に関与することが示唆される。そこで葉緑体ゲノムにコードされるNDHの11サブユニット遺伝子のノーザン解析を行ったところ、ndhBのRNAサイズに相違が認められた。詳細に調べた結果、crr2では成熟したndhB mRNAが見られず、上流のrps7と結合した前駆体RNAが蓄積していた。また野生株を用いたndhBの5'-RACE解析の結果、mRNAの成熟課程でCRR2により切断されると示唆されるmRNA切断部位を同定した。以上のことから、crr2においてrps7ndhB mRNAの転写後切断に異常が生じ、そのためにndhBが翻訳されずNDH活性を欠失した事が明らかとなった。
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© 2003 日本植物生理学会
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