抄録
青色光受容体として最近見いだされたフォトトロピン(phot)は、光屈性や葉緑体定位運動、気孔の開口など様々な光応答に関わる。photは、フラビンを発色団として結合する分子量約11万の色素タンパク質で、N末端側の発色団領域とC末端側のキナーゼ領域からなり、細胞膜と結合して存在すると言われているが、その作用機構は不明である。我々は、photが単細胞緑藻のクラミドモナスにも存在することを見出した。そこで、クラミドモナスのphot(Crphot)が、系統的に大きく離れたシロイヌナズナでも機能するかどうかを調べた。Crphotを35Sプロモーターの制御下で、シロイヌナズナのphot1 phot2二重変異体で発現させたところ、発現量が高い系統においては、様々なphot欠損表現型の回復が認められた。従って、系統的に大きく離れた植物種間においても共通のCrphot情報伝達経路が存在することが示唆された。次に我々は、photのキナーゼ領域の役割について検討を加えた。全長photあるいはそのキナーゼ領域をタンパク質間相互作用を調べるための酵母Cytotrap系で発現させたところ、photのキナーゼ領域が自発的に細胞膜に移行することが示唆された。現在我々は、この酵母反応系を用いて、1)どのような構造が細胞膜への移行に必要か、2)膜への移行と生理活性の間にどのような関係があるか、について調べている。