日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
会議情報

一人三役の青色光センサー:光活性化アデニル酸シクラーゼの構造と機能
*伊関 峰生渡辺 正勝
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. S12

詳細
抄録
 単細胞鞭毛藻ミドリムシ(Euglena gracilis)は周囲の光環境の変化に敏感に応答することから、古くより光感覚のモデル生物として扱われてきた。ミドリムシの光運動反応の作用スペクトルは紫外~青色域にピークを持ち,フラビンの吸収スペクトルによく対応する.また,ミドリムシの鞭毛基部にはフラビン特有の自家蛍光を発するPFB (paraflagellar body)と呼ばれる構造が存在し、これが光受容器官であると考えられてきた。そこで我々はPFBを単離し、その中に含まれるフラビンタンパク質を新しい青色光センサーとして同定することに成功した。
 精製されたフラビンタンパク質は分子量約40万で、発色団としてFADを結合した大小2種類のサブユニットからなるヘテロ四量体であると推測された。それぞれのサブユニットのアミノ酸配列は互いによく似ており、既知のFAD結合領域に類似性のある領域と、アデニル酸シクラーゼの触媒領域に類似性のある領域が各サブユニットに交互に2箇所ずつ含まれていた。このフラビンタンパク質のアデニル酸シクラーゼ活性を測定したところ、顕著な活性がみとめられ、さらにこの活性は青色光照射により劇的に上昇した。すなわち、このフラビンタンパク質は、受容した光信号をGタンパク質等を介さず直接cAMPの産生という形で伝達可能な全く新しいタイプの光センサーであることが明らかになった。
著者関連情報
© 2003 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top