抄録
小胞体で合成されるタンパク質は、小胞輸送により、液胞や細胞外へ輸送される。小胞体内でタンパク質の高次構造形成に異常が生ずると、小胞体分子シャペロン、タンパク質分解系、小胞輸送系などの遺伝子が誘導される。この現象は小胞体ストレス応答と呼ばれる。植物における小胞体ストレス応答の分子機構に関して、以下の知見を得た。1)酵母、動物の小胞体ストレスセンサーである受容体型タンパク質キナーゼ/リボヌクレアーゼIRE1のホモログがシロイヌナズナに2コピー存在する。両ホモログは小胞体に局在し、N末領域は酵母でセンサーとして機能する。2)シロイヌナズナBiPプロモーター上の小胞体ストレス応答に必要なシス配列(P-UPRE)を決定した。P-UPRE は動物のシス配列と保存性が高く、同様の配列は他の小胞体シャペロン遺伝子のプロモーター上にも認められた。3)酵母のHAC1、動物のXBP1はIRE1依存的mRNAのスプライシングにより、動物のATF6はタンパク質の切断により機能発現し、小胞体ストレス応答に関わる。それぞれの間にホモロジーは無いが、いずれもbZIP型転写因子である。ゲノム情報をもとにシロイヌナズナから小胞体ストレス特異的に転写が誘導されるbZIP型転写因子AtERZIPを単離した。現在、IRE1ホモログとAtERZIPの植物体における機能解析を進めている。