日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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植物の成長調節を用いたスギ花粉症の克服に向けたアプローチ
*本間 環
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p. S25

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抄録

現在、スギ花粉は日本の春先における代表的なアレルギー疾患となっている。これはまさに植物が他生物(動物)に対して影響を与えている例である。スギ花粉症を解決するためには医学的あるいは植物生理学的な対策が必要とされている。しかし、現在でもスギ花粉症の有効な治療や発生源の対策は実用化されていない。スギの材は建築材や家具材として価値が高い。そのために、スギは日本の有用樹木として盛んに植林されてきた。この際に必要となったのは、安定した種子の供給であった。種子生産の技術として植物ホルモンの一種であるジベレリン(GAs)を処理することで花芽形成の誘導が行われていた。しかし、植物ホルモンとスギの花芽形成のメカニズムとの関連は不明であった。そこで、スギに含まれる内生植物ホルモンの分析を行った。その結果、花芽形成の直前にGA3の含有量が著しく増加することが明らかとなった。このことから、GAsはスギの花芽形成に関与していることを示唆している可能性が示された。このことは、スギ花粉の発生源の対策としてGAsを制御すればスギの花芽形成を抑制できる可能性をも示唆していた。そこで、GAsの生合成阻害剤の処理を行った。その結果、スギの花芽形成は顕著に抑制された。ここでは、植物の成長調節を用いてスギ花粉の飛散防止を目的とした研究について、実験室レベルからフィールドレベルへの応用および実用化について紹介する。

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© 2003 日本植物生理学会
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