抄録
微小管はα、β-チューブリンのヘテロダイマーが重合してつくられる。細胞内での微小管重合には微小管の重合核が必要であり、動物では中心体に存在するγ-チューブリン複合体が重合核の役割をしている。一方、高等植物細胞においては、中心体は存在せず、間期の微小管は表層微小管として細胞膜に沿って存在する。演者らはγ-チューブリンが表層微小管の端に存在することを示したが、表層微小管形成に働いていることの証明はできていない。また、植物細胞においてはγ-チューブリンが細胞分裂、細胞伸長に働く実験的証拠はない。本研究では、virus-induced gene silencing によりγ-チューブリンの発現を抑制し、細胞分裂、細胞伸長と微小管構築に対する影響を調べたので報告する。
Nicotiana benthamiana γ-チューブリンmRNA部分配列を持つトマトモザイクウイルスを作成し、N. benthamiana植物体に感染させた。ウイルスは茎頂分裂組織に入れないため植物体は成長を続けたが、新たに展開する葉の表皮細胞の形態異常、気孔の形成阻害、柵状組織の細胞分裂阻害などさまざまな異常が見られた。ウイルスが感染した葉ではγ-チューブリン量は数分の1以下に減少していた。γ-チューブリンmRNA部分配列を持たないウイルスは影響を与えなかった。微小管の観察結果もあわせて報告する予定である。