抄録
右巻き及び左巻きのアラビドプシス変異株の大規模スクリーニングを行った結果、右巻き変異株が4遺伝子座以上、左巻き変異株は5遺伝子座得られた。右巻き変異株では根、胚軸、葉柄、花弁などの伸長器官の表皮細胞が右巻きにねじれて伸長しており、これら軸器官の内部組織(皮層、内皮など)は横方向に肥大していた。一方、左巻き変異株では表皮細胞が左巻きにねじれて伸長していた。従って、伸長している軸器官の内部組織の細胞が縦方向に伸長せず肥大するのにも関わらず、表皮細胞はほぼ縦方向に伸長するため、内部と外部の細胞層の縦方向の長さの差が生じ、この伸長差を補正するために表皮細胞がねじれると考えられる。
植物細胞が縦方向に伸長する場合、細胞の縦軸に対して直角方向に配向する表層微小管に沿ってセルロース微繊維が配向し、細胞の伸長方向を決定するとされる。右巻き変異株では表皮細胞の表層微小管の配向が左巻きになっており、左巻き変異株では逆に右巻きになっていたことから、ねじれ遺伝子は表層微小管の配向制御に係わると考えられる。
左巻き変異株はα又はβチューブリンのdominant negative型のアミノ酸置換型変異であり、右巻き変異株のspiral1とspiral2は植物特異的な新規遺伝子ファミリーの劣性変異であった。また、SPR1とSPR2は表層微小管に局在した。ねじれ遺伝子の機能解析により、微小管の配向制御機構が明らかになると期待される。