日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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植物の1倍体と2倍体の発生進化
*長谷部 光泰
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p. S36

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抄録
陸上植物は1倍体世代と2倍体世代の両方に多細胞植物体を形成する。系統解析の結果、陸上植物にもっとも近縁なのはシャジクモ藻類であることがあきらかになった。このことから、陸上植物の祖先はシャジクモのように多細胞性1倍体を持ち、2倍体になるのは受精卵だけだった可能性が高い。すなわち、陸上植物の多細胞性2倍体は、陸上植物がシャジクモ藻類と分岐した約10から5億年前以降に新規に獲得されたのである。では、多細胞性2倍体発生の分子機構は多細胞性1倍体のそれとどのような関係があるのだろうか。元来多細胞性1倍体で使っていた遺伝子系をどのくらい改変して多細胞性2倍体を作り上げたのだろうか。(1)被子植物多細胞性2倍体の花器官形成遺伝子であるMADS-box遺伝子が元来は1倍体世代の卵、精子形成に関わっていたこと、(2)シロイヌナズナ全MADS-box遺伝子の2倍体と1倍体における役割と進化、(3)ヒメツリガネゴケ1倍体世代ESTとシロイヌナズナゲノムの比較による1倍体優占植物と2倍体優占植物での遺伝子構成の相違点、(4)シロイヌナズナのシュート形成維持に重要なSHOOT MERISTEMLESS遺伝子機能、オーキシンの極性輸送のシロイヌナズナ2倍体シュートとヒメツリガネゴケ1倍体シュートでの違いから植物の多細胞性2倍体の進化がどのようなゲノムの変化とそれに伴う発生様式の変化によって起きたかを議論する。
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© 2003 日本植物生理学会
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