抄録
多くの細胞は外来の機械刺激を受容して様々な応答を示す。また、細胞の成長、分裂、形態変化、運動に伴って細胞の各所に多様な力が発生し、細胞応答を修飾する。そもそも細胞や器官の形態や機能の多くは細胞骨格、接着分子、膜に発生する様々な力で維持されている。外来刺激はこの内在力(pre-stress)を変化させて応答やその修飾を導くのである。機械刺激の受容/応答はかくも多様な現象に関与する重要機能であるが、その仕組みの多くは謎である。ここでは、唯一実体が分かっているメカノセンサーであるSAチャネルに関する最近のトピックを紹介する。最もポピュラーなSAチャネルは陽イオン透過型であり、その活性化によって細胞内Ca2+濃度が上昇することはいくつかの動物細胞で確立されている。不明なのは、このチャネルの活性化が膜の伸展のみで生じるのか、あるいは細胞骨格の助けを必要とするのか、という点である(ただしこの二つの仕組みは排他的ではない)。もし細胞骨格が力の伝達媒体だとすれば、力の負荷点から遠く離れたセンサーに速やかに力学刺激を伝えたり、力の方向を感知することも可能となり、細胞の機械感受能の多様性をもたらすに違いない。本講演では、血管内皮細胞のSAチャネルが細胞骨格を介した力で活性化するという証拠を示し、細胞の力方向感知との関連について議論したい。