抄録
Water-water cycle (WWC) は、当初、光合成における活性酸素の消去系として認識され、最近では光傷害の緩和に役立っていることが示唆されている光合成の代謝系である(Miyake, Makino 2003)。これに加え、WWCは光合成の光誘導過程においてスターターとして機能していることが示唆された(Makino et al. 2002)。しかし、WWCが機能しない0%酸素条件でも時間はかかるものの光合成は誘導されることから、WWCは必須ではないことが確認された。0%酸素条件ではチラコイド膜上のΔpHの指標であるNPQ形成も緩慢であった。従ってWWCは、光照射開始後の迅速なΔpH形成に貢献し、このΔpH形成によって生ずるATPが、Rubisco activase活性化に関与し、光合成が誘導されていることが考えられた。そこで、Rubisco活性測定を行った。しかしながら、まだ誘導初期の光合成速度が低い段階でRubiscoの活性化状態はすでに8割に達しており、Rubiscoの活性化が光合成の光誘導を律速しているとは言えなかった。イネでは、5時間以上の暗処理を施すと、強いdark-inhibitionが観察された。この5時間暗処理によって強く失活したRubiscoを活性化するためには、多量のATPが必要とされることが考えられた。しかし暗処理葉においても光照射後速やかにRubiscoの活性化が認められたことからRubiscoの活性化が光合成の光誘導を律速しているわけではなかった。