抄録
我々は,光合成を行わない植物における光シグナル伝達経路が,光合成植物のものとどの程度異なっているかを明らかにし,植物の光シグナル伝達に関して新しい知見を得ることを目的として研究を進めている.本発表では,全寄生植物 Orobanche minor よりフィトクロム A (PHYA) 相同 cDNA を単離し,そのキャラクタリゼーションを行った結果に関して報告する.圃場にてアカクローバーに寄生させた O. minor より total RNA を抽出し,縮重プライマーを用いた RT-PCR および RACE 法によってPHYA 相同 cDNA をクローニングした.得られた配列 OmPHYA のコードするタンパク質 OmPHYA はシロイヌナズナの PHYA と約 70% の配列類似性を示した.また,realtime PCR による発現解析の結果,明所で生育させたものと比較して,暗所で生育させた植物体において OmPHYA の発現量が増加していた.OmPHYA の C 末端に sGFP を融合させたタンパク質をシロイヌナズナのプロトプラストで一過性に発現させたところ,暗所では細胞質に局在していた OmPHYA:sGFP が遠赤色光下では葉緑体に局在することが示された.