抄録
双子葉植物の芽生えは暗黒では、胚軸先端が釣り針状に曲がりフックを形成しているが、光が当たるとフックは開いて胚軸は真直ぐに立ち上がるということが定説になっている。この光の作用は、赤色光(R)パルスによって引き起こされ、遠赤色光(FR)パルスによって打ち消されるフィトクロムlow-fluence-response (LFR)として、主としてエンドウ芽生えを用いた実験で広く知られてきた。しかし我々は、トマトの暗黒芽生えに、RあるいはFRのいずれを与えても、完全暗黒においた芽生えに比べ、フックが巻き込む(更に内側に曲がる)ことを見出した。同様の反応は、パセリ、ニンジン、キュウリでも認められた。特にトマトとパセリでは、FRパルス単独照射が、Rパルスと同程度の巻き込みを引き起こした。トマトのphyA欠損mutantでは、FRの効果が無くなることから、フィトクロムvery-low-fluence-response (VLFR)が重要な役割を果たしていると考えられる。一方、シロイヌナズナ、キャベツ、ナバナ(いずれもアブラナ科)ではR、FRのいずれもフックを開かせることが確認され、シロイヌナズナでは、顕著なVLFRが認められた。フィトクロムのVLFRとLFRによるフック巻き込みを、開く反応と対比し解析する。