抄録
タバコ(Nicotiana tabacum)の酸素発生系表在性23-kDaタンパク質は4つのpsbP isogenesにコードされている。これらのpsbP遺伝子は配列相同性によりグループI(1A, 5B)とグループII(2AF, 3F)とに分類でき、グループIIが主な成分として発現している。本研究では、2つのpsbP遺伝子グループの機能を明らかにする為、RNAi法により作製したグループI及びグループII特異的PsbP発現抑制形質転換タバコ(山本他、本学会2004年会)の解析を行っている。
Western解析とNorthern解析によりそれぞれのPsbPグループの発現抑制がT1世代でも維持されていることを確認した。次いで、T1抑制体を用いてクロロフィル蛍光を測定した。グループI抑制体ではコントロール株と顕著な差は示されなかったが、グループII抑制体では高いクロロフィル蛍光(F0)と強光条件下における光合成活性の低下が観測された。PsbPの減少による光合成活性の低下は、これまで植物体レベルでは報告がなく初めての例である。この光合成活性の低下が、PsbPのグループ間の機能の差、あるいは単に発現量の差によるものなのかを明らかにする為、現在、T2抑制体で詳細な解析を進めると共に、グループ特異的抑制体に異なるグループのpsbP過剰発現コンストラクトを導入した過剰発現体を作製している。