抄録
光化学系IIのルーメン側に存在する表在性33-kDaタンパク質(PsbO、もしくはOEC33)は、すべての光合成器官に共通して存在し、光合成酸素発生に重要な働きを持つタンパク質である。シロイヌナズナにおいて、このタンパク質はpsbO、psbO2の2つの遺伝子によってコードされている。これらの遺伝子産物は高い相同性を有しているが、その蓄積量はpsbO遺伝子に由来するPsbOタンパク質のほうが明らかにおおい。psbO遺伝子に変異をもち、PsbOタンパク質が合成されないシロイヌナズナの突然変異体を用いた解析の結果、psbO2遺伝子のみではpsbO遺伝子の欠損を補えないことが明らかとなった。すなわち、両遺伝子の発現および機能に差異が存在する可能性が示唆された。本研究では、両タンパク質の機能を検証するため、大腸菌大量発現系を用いて組換えPsbO、PsbO2タンパク質を調製するとともに、精製したこれらタンパク質とホウレンソウのPSII膜を用いてin vitro再構成実験を行なった。その結果、PsbO2タンパク質が結合することによる酸素発生活性の回復は、PsbOタンパク質が結合した場合よりも低く、両タンパク質の間には機能的差異が存在することが示唆された。現在、両タンパク質のPSII膜への結合活性の検討を含めた、より詳細な解析をすすめている。