日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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低波数赤外分光法による光合成酸素発生系マンガンクラスターのS状態間遷移の観測
*木村 行宏山成 敏広石井 麻子小野 高明
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p. 221

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抄録
光合成酸素発生複合体の触媒中心を担う光化学系IIマンガン(Mn)クラスターは、S0からS4の5つの酸素発生反応中間状態(S状態)を経て2分子の水を1分子の酸素に変換することが知られているが、その詳細な反応機構は解明されていない。本研究では赤外分光法を用いて、好熱性ラン藻Thermosynechococcus elongatus光化学系IIコア標品の各S状態間遷移に伴うクラスター骨格振動及びMn-配位子(水分子、アミノ酸)由来の振動の変化を直接検出し、これらのモードに対するH2180置換の効果について調べた。中赤外領域(1800 - 1000 cm-1)ではS2/S1、S3/S2、S0/S3、S1/S0遷移に対応したタンパク質やアミノ酸配位子由来の特徴的な振動構造が観測されたが、これらのバンドに対するH2180置換の効果は見られなかった。一方、低波数領域(650 - 350 cm-1)では650 - 600 cm-1の領域にS状態遷移に伴って符号や強度が変化するバンドが観測された。これらのバンドはH2180置換により顕著な同位体シフトを示したことから、光合成酸素発生反応に密接に関与したMnクラスターの骨格構造、或いはMnクラスターと基質の水分子の相互作用に由来するものであることが示唆された。
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© 2004 日本植物生理学会
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