抄録
葉緑体遺伝子psbDは青色光応答プロモーター(psbDLRP)を有し,PEPシグマ因子の一つSIG5により特異的に認識され転写される.シロイヌナズナではPEPシグマ因子としてSIG1-6が同定されており各々核コードであるが,SIG5の転写が他と異なり,クリプトクロムを介し青色光特異的に誘導されることから,我々はpsbDLRPの青色光応答性はSIG5の青色光転写誘導挙動に起因すると結論した.しかし,SIG5転写は弱青色光(5 μmolm-2s-1)で誘導されるが,psbDLRPは弱青色光のみでは活性化されず,青色光に加えて青色光非特異的強光が必要である.本研究では2種の光シグナルによるpsbDLRP活性化制御機構を解析した.
シロイヌナズナを暗所適応後,青色光(5 μmolm-2s-1)照射すると、SIG5は約30分後から経時的に増加し120分で一定値に達した.ここで赤色光(50 μmolm-2s-1)に切り替えたところ,psbDは速やかに転写誘導され,これはDBMIB処理により促進された.このような結果から、青色光によりSIG5が転写誘導された後,光合成電子移動によるプラストキノンプールの還元状態への移行によりpsbDLRPが活性化されることが示され,psbDの転写が核における青色光情報伝達および葉緑体における還元状態の両者により調節されている可能性が示唆された.