抄録
我々は、ポプラカルス細胞壁から単離した細胞壁結合性ペルオキシダーゼアイソザイム(CWPO-C)がシナピルアルコールやリグニンポリマーに対する高い酸化能を有することを明らかにし、酵素の動力学的特性の面からCWPO-Cがリグニン脱水素重合に関与することを示唆してきた。今回、CWPO-Cの全長cDNAのクローニング、in vivoにおける発現特性及び免疫染色法によりポプラの二次木部におけるCWPO-Cタンパク質の局在パターンを解析したので報告する。
アミノ酸シークエンスから特異的プライマーを作成し、RT-PCR、RACE法により全長cDNAを得た。競合的PCR法を用いて、4~7月におけるxylemにおけるmRNAレベルでの発現量を調べたところ、その発現量はほぼ一様であり、調査した木化する組織においてその発現量は同程度であった。また、本アイソザイム発現は傷害ストレスに誘導されないことから、CWPO-Cは二次木部で恒常的に発現していることが示唆された。二次木部においてCWPO-Cタンパク質は2次壁肥厚帯中期から成熟期にかけて局在し、繊維細胞ではリグニン含有率が高い細胞間層とセルコーナーに観察された。したがって、CWPO-Cは恒常的に発現し木繊維壁でのリグニン脱水素重合に関与すると判断された。