日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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アズキ上胚軸切片の伸長成長に対する抗酸化剤の影響
橋本 鉄郎*井上 雅裕
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p. 249

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抄録
アポプラストのレドックス環境は細胞壁代謝と細胞成長を左右する重要な要因の1つと考えられる。本研究では明所と暗所で生育させたアズキの上胚軸切片の伸長成長に対するアスコルビン酸(AsA)とグルタチオン(GSH)の影響を調べた。これらは植物の代表的な抗酸化剤として知られる。その結果、暗所において両物質は上胚軸切片の伸長を促進することなくむしろ阻害的に作用した。一方、明所の実験ではGSHが伸長成長を強く促進しAsAはそれを阻害するという極めて対照的な結果が得られた。ここでGSHはインドール酢酸(IAA)を添加しない場合にも切片の伸長を誘導したので部分的にオーキシン作用を模倣すると思われた。外部から与えたGSHがアポプラスト内で作用するのか細胞内で作用するのかその機構については全くわかっていない。そこで細胞内のGSHとGSH関連物質の濃度変化を調べた。その結果、GSH処理によって細胞内GSHの濃度が増加することがわかった。しかし、その合成阻害剤であるブチオミンスルフォキシミン(BSO)を添加してもオーキシンによる伸長成長は殆ど阻害されなかった。以上の結果からGSHはアポプラスト環境の変化もしくはシンプラストへの輸送過程に伴う変化のどちらかによって細胞成長を促進すると考えられた。
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© 2004 日本植物生理学会
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