抄録
MAP kinase cascadeは真核生物に広く保存されているシグナル伝達系の一つであり、高等植物においては環境ストレスや病原菌感染などに対して重要な役割を果たすことが報告されている。近年、シロイヌナズナのGenome sequence projectが終了し、シロイヌナズナゲノム中にはMAPKKK遺伝子が60、MAPKK遺伝子が10、MAPK遺伝子が20個存在することが明らかとなった。今回、我々はMAPK kinaseの一つであるAtMKK3に着目し、AtMKK3がどのMAP kinaseを活性化するかについてin vitro活性法により検討した。その結果、AtMKK3はAtMPK6、AtMPK8を特異的に活性化することが示唆された。次に、グルココルチコイド誘導系を用いて、AtMKK3を植物体内で過剰発現させ、AtMKK3によって特異的にリン酸化されるタンパク質をゲル内リン酸化法により測定した。その結果、46kDa付近と、65kDa付近に存在するタンパク質が特異的に強く活性化されることが明らかとなった。更に、AtMPK6を特異的に認識する抗体を用いて、免疫沈降後、ゲル内リン酸化反応を行ったところ、AtMPK6がAtMKK3によって活性化されることが明らかとなった。以上のことから、in vivoにおいてもAtMKK3-AtMPK6カスケードが存在することが明らかとなった。現在、AtMKK3、AtMPK6遺伝子破壊植物体を用いて、AtMKK3-AtMPK6カスケードの植物体における生理作用についても解析を行っている。