抄録
高等植物において、イソクエン酸を2-オキソグルタル酸 (2-OG) に変換する酵素には、NADP依存型とNAD依存型のイソクエン酸脱水素酵素 (ICDH、IDH) の2種の分子種が存在する。2-OGは、呼吸基質となるだけでなく、グルタミン酸合成酵素 (GOGAT) への炭素骨格を供給する分子であり、窒素代謝と炭素代謝の接点に位置している。
イネのICDHにはサイトソル型(ICDH1-1、ICDH1-2)、葉緑体型 (chroloplastic ICDH) 、ペルオキシソーム型(peroxysomal ICDH)の計4種類のアイソジーンが存在しており、各遺伝子の構造を解析した。また、推定される機能タンパク質領域のアミノ酸配列は、互いに高い相同性を示した。全ICDH活性は、葉身では完全展開直後に、穎果では開花後15日目に高い値を示した。一方、IDHには活性サブユニットIDHaと調節サブユニットIDHb、IDHcが存在しており、イネから各遺伝子を単離した。IDHa特異抗体を用いて免疫組織化学的手法を行った結果、IDHaタンパク質は葉身、穎果の維管束組織に主に局在していることがわかった。これらの結果より、ICDH、IDHともにGOGATへ2-OGを供給する可能性があることが示唆された。