抄録
Rhodospirillum rubrum G9 (カロテノイド欠損変異株) および S1 (野生株) のLH1アンテナ複合体に、5種類の共役二重結合数nの異なるカロテノイド、即ち (ヌロスポレン (n = 9), スフェロイデン (n = 10), リコペン (n = 11), アンヒドロロドビブリン (n = 12), スピリロキサンチン (n = 13) を再構成した。サブピコ秒時間分解吸収スペクトルを測定し、可視領域の特異値分解およびグローバルフィッティングを行った。さらに、近赤外領域のQy吸収の消失の時間変化も用いて、LH1のエネルギー伝達および三重項生成のカロテノイドの共役鎖長依存性を解明した。
時間分解スペクトルの解析の結果、カロテノイドからバクテリオクロロフィルへのエネルギー伝達はnが大きくなるに従って遅くなっていた。それに対して三重項状態の生成は次第に速くなっていた。さらに、nが10から11に変化する際にエネルギー伝達に大きな変化が見られ、n = 11−13では1Bu-, 2Ag- 状態からバクテリオクロロフィルへの伝達が殆ど起こらなくなっている事が判った。1Bu+, 1Bu-, 2Ag- チャンネルを通じてのLH1のエネルギー伝達効率は、LH2で得られた分析結果とよく対応している (Rondonuwuらの発表を参照)。