抄録
植物は外界から様々な環境ストレスにされており、その多くが植物内で活性酸素を生じさせることから酸化的ストレスに対する植物の応答機構の研究が重要視されている。植物の酸化的ストレスに対する研究は、比較的遅い反応(数時間~数日)に向いており、その初期反応についての知見は得られていない。本研究ではストレス源としてオゾンを用い、植物の酸化的ストレスに対する初期応答機構に関する解析を行った。シロイヌナズナを用いていくつかのオゾン誘導性遺伝子の発現を経時的に調べた結果、グルタチオン転移酵素(AtGST3)の発現がオゾン暴露1時間以内に高レベルに誘導された。さらにこの遺伝子の発現誘導はオゾン暴露後45分で見られることが明らかになった。これまでの研究でAtGST3遺伝子の比較的遅い発現はエチレンやサリチル酸によって制御されていることが知られている。しかし、変異体を用いた解析により本研究で見られた早い発現はエチレンやサリチル酸とは無関係に起こることが示された。一方、阻害剤を用いた解析からこの遺伝子の初期発現誘導はkinase及びCa2+により制御されてることが明らかになった。また、動物で知られているNrf2-Keap1遺伝子発現制御系に関与し、AtGST3遺伝子のプロモーター領域にあるARE (antioxidant responsive element)配列の植物における役割についても考察する。