抄録
2002年度大会において,スターチシンターゼI型(SSI)活性が約1/6に低下したイネ変異体の解析結果について述べた。本大会では,新たにTos17ノックアウトイネ集団(約4万系統)からPCR法で選抜した酵素活性レベルが異なる複数の系統の解析によってデンプン合成におけるSSIの機能をより詳細に解明することを目的とした。変異体のM2登熟種子のNative-PAGE/活性染色によって胚乳SSI活性を測定したところ、野生型に対してそれぞれ約1/4, 1/5, 1/6およびゼロに低下していた。これらの胚乳アミロペクチンの鎖長分布はいずれも重合度(DP)8-12が減少しDP6-7およびDP16-20が増加しており,その変化はSSI活性が少ない系統ほど大きかった。また,葉身のアミロペクチンも胚乳のものと同様の変化を示した。このことから,SSIは,アミロペクチンのDP8-12の短鎖を合成する特異的な機能を有すると考えられた。一方,SSI活性を完全に失った系統においても種子やデンプン粒の大きさや形態には変化がなかったため,他のSSアイソザイムがそれらを相補していると考えられた。