抄録
我々はイネ種子の長径を支配する分子機構を明らかにするために粒型が変異した短粒変異体の変異原因遺伝子の同定を進めている。今回はイネ矮性変異体dwarf11(d11)の変異原因遺伝子を同定したのでその結果を報告する。この変異体はブラシノステロイド変異体d61,d2と同様に第2節間の伸長阻害が見られた。このことよりd11変異体はブラシノステロイドに関係する変異体の可能性が考えられた。Map-based cloningを用いてd11変異体の原因遺伝子を同定・単離を行った結果、この変異原因遺伝子は新規なチトクロムP450遺伝子をコードしていると推定された。D11遺伝子のアミノ酸配列をBLASTサーチで解析したところアラビドピシスDWF4に40%程度の相同性を示した。幼苗組織でのD11mRNAの転写量は野生型と比較してd11変異体で上昇していた。また、D11mRNAの転写はブラシノライド添加前後の野生型で減少しており、フィードバック阻害がかかっていると考えられた。d11変異体と野生型の植物体を用いたブラシノステロイド中間体の定量より、D11遺伝子は6-Deoxo3DTから6-DeoxoTYへのステップと3DTからTYへのステップを触媒する可能性が推測された。以上の結果よりD11遺伝子はブラシノステロイド生合成経路の新規遺伝子であり、イネにおいて種子の長径を支配すること考えた。