抄録
我々は、少なくとも主要な熱ショックタンパク質(HSP)がシアノバクテリアの熱耐性獲得に重要な役割を果たすことを示してきた。In vitroの研究により、低分子量HSPとHtpG (Hsp90 family)の主な機能は、変性タンパク質と結合し天然構造への折れたたみ可能な状態の維持であると考えられている。シアノバクテリアの低分子量HSP(HspA)やHtpG遺伝子破壊株は、高温における生育阻害や獲得性熱耐性の顕著な減少などの類似の表現型を示す。そこで、HspAとHtpGが相補可能な細胞機能を有するのかどうかを明らかにすることを本研究の目的とした。
まず、HtpG破壊株にHspAを構成的に大量発現するシャトルベクターを導入し、相補試験を行った。HspAは変異株の高温における生育および生存率を改善させることができなかった。これは、HtpGの機能がHspAのそれとは異なることを示唆している。HtpGとHspAが標的タンパク質を限定した特殊な細胞機能を果たすのではないかと仮定して、現在、これら分子シャペロンの標的タンパク質の同定を試みている。