抄録
Synechocystis sp. PCC 6803株は鉄欠乏条件下でCP43’およびフラボドキシンをコードするisiABオペロンを発現誘導させる。このオペロンは高温、酸化ストレス条件下でも発現することが最近明らかにされた。そこで、isiA/isiBおよびisiB遺伝子破壊株を用いてこれらのストレス耐性獲得に果たすCP43’およびフラボドキシンの役割解明を本研究の目的とした。5 μM methylviologenの存在下では、isiA/isiBとisiBの両変異株に生育阻害、光合成色素量の減少、生存率の低下がみられた。isiAに比べ、isiB破壊株の方が酸化ストレスに対する著しい感受性を示した。穏やかな高温(42℃)では、isiA/isiB破壊株のみに顕著な生育阻害、光合成色素の減少がみられた。致死温度処理(48℃)後の生存率は、野生株の3.7%、isiB破壊株の0.75%に対して、isiA破壊株は0.0098%で、明確な高温感受性を示した。isiABオペロンを形成するにもかかわらず、isiA/isiBとisiB破壊株は高温ストレスと酸化ストレスに対する異なる表現型を示した。これらの結果は、CP43'とフラボドキシンが、酸化及び熱ストレス条件下で重要な役割を果たすことを示すものである。