抄録
優れた乾燥強光耐性を示す野生スイカの葉組織では、強光乾燥ストレスに伴い活性酸素消去能に優れたシトルリンが高蓄積される。この蓄積機構を解明するために、初発段階と第5段階を同時に触媒する酵素glutamate acetyltransferase (GAT)に注目し、機能解析を行った。
まず、野生スイカの葉からGAT酵素を精製した。精製酵素は、2つのサブユニットから構成されていた。それぞれのポリペプチドのN末端アミノ酸配列は、シロイヌナズナの GATホモログの37から49番目のアミノ酸、249から283番目のアミノ酸とそれぞれ相同性を示した。また、5’-RACEにより得られたスイカGATのcDNAを解析したところ、葉緑体移行シグナルペプチドの存在が推定された。このことから、野生スイカのGAT酵素前駆体は葉緑体に移行し、酵母のミトコンドリアGATと同様に自己触媒的切断によって2つのサブユニットが形成されると想定している。
次にGATの酵素学的性質を解析したところ、酵母GATと異なり、シトルリン、アルギニンによるフィードバック阻害は認められず、至適温度は70οCと高い値を示した。また乾燥強光条件下で野生スイカは、水分の蒸発を防ぐため気孔の閉鎖し、葉面温度が約45οCに達する。これらの結果に基づいて、GATの乾燥強光時のシトルリン蓄積における役割を考察する。