抄録
アッケシソウ(Salicornia europaea)は、アカザ科に属する一年生草本で、塩湿地に群落を形成する最も強力な耐塩性を有する塩生植物の1つである。秋には紅葉するため、サンゴ草とも呼ばれている。本種は海岸の開発により減少傾向にあることから、絶滅危惧種に指定されている。本研究ではアッケシソウのもつ強力な耐塩性機構を細胞レベルで解析することを目的とし、その培養細胞系の確立を試みた。滅菌したアッケシソウの葉を用いてカルス形成条件を検討した結果、明 (16h)/暗 (8h) 条件下、Murashige-Skoog培地に 2,4-Dichlorophenoxyacetic acid を1×10-7 M、6-Benzylaminopurineを1×10-6 M添加した寒天培地上において最も良好なカルスの形成が確認された。得られたカルスの継代培養した結果、緑色カルスの他、ベタレイン色素を蓄積する赤色カルスが得られた。これらのカルスの耐塩性を検討した結果、300mM 以上のNaCl存在下でも生育できることが確認された。これらのカルスを暗条件下に置いた場合、それぞれの色素含有量は急激に減少することも明らかとなった。本研究ではこれらの培養細胞を用い、耐塩性、細胞内イオン組成、細胞内イオン含量に関する詳細な検討を試みた。