抄録
植物のさまざまな情報伝達系に、Ca2+透過性伸展活性化陽イオンチャネルが関与する可能性が示唆されている。例えばタバコ培養細胞BY-2に浸透圧ショックを与えると、細胞質のCa2+濃度が一過的に上昇し、また感染シグナルによる生体防御反応誘導過程におけるCa2+動員の制御には、細胞骨格系が関与する可能性が示唆された。しかしこうしたCa2+チャネルの分子的実体は明らかでない。シロイヌナズナのAtMID1Aは、出芽酵母のCa2+透過性伸展活性化陽イオンチャネルMID1の欠損変異株の致死性を相補する(中川祐子ら、本大会発表)。単子葉のモデル植物イネや、Ca2+シグナル伝達機構の細胞生理学的研究が進んでいるBY-2細胞から、酵母MID1の機能を部分的に相補するAtMID1Aの相同遺伝子OsMID1、NtMID1A/Bを単離した。OsMID1はイネのゲノム中に単一の遺伝子として存在していた。植物のMID1ファミリーの機能を解明するため、過剰発現株や、発現抑制株を作製し、さまざまな刺激やストレスを与えたときの応答性の変化を網羅的に解析している。また植物のMID1ファミリーと、他種類のCa2+チャネルとの相互作用の可能性を検討した結果についても議論したい。