抄録
本研究の目的は、植物におけるアミノ酸代謝制御、特に光呼吸系におけるアミノ酸代謝の解析をおこなうことである。グルタミン酸グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ(GGAT)は、グルタミン酸+グリオキシル酸→グリシン+2-オキソグルタル酸の反応をになう。光呼吸系で働くペルオキシソーム局在型GGATは、光呼吸、アミノ酸代謝に直接関わる重要な酵素である。
我々はアラニンアミノトランスフェラーゼ様タンパク質の遺伝子破壊株の解析から、この遺伝子(GGAT1と命名)が光呼吸系で働くペルオキシソーム型GGAT遺伝子として機能することを明らかにした(Igarashi et al. Plant J 33, 975-987 2003)。
ここでは、GGAT過剰発現株を作出し、アミノ酸代謝と光呼吸に対する機能を解析したので報告する。様々なGGAT1mRNA発現量の過剰発現株を得たところ、セリン含量が野生型の最大20倍に増加していた。GGAT1mRNA発現量とGGAT活性、さらにセリン含量に顕著な相関が認められ、セリンの増加はGGAT1mRNAの過剰発現によるGGAT活性の増加によるものと推察された。またセリン以外のアミノ酸含量も器官や栽培条件に応じ大きく変化した。この結果はGGAT1が植物におけるアミノ酸含量の調節に関与する可能性を示唆する。