抄録
植物における有用アルカロイド輸送・蓄積のモデルとして、キンポウゲ科多年生草本のオウレンにおけるベルベリン蓄積機構を解析している。同植物において主アルカロイドのベルベリンは根において生合成され、根茎に蓄積される。すなわち、本アルカロイドは根から根茎に輸送され蓄積していると考えられる。我々はこれまでに、細胞膜に局在するMDR(multi-drug resistance)タイプのABC (ATP-binding cassette) タンパク質CjMDR1がベルベリンの組織間での転流に関与することを示唆する結果を報告してきた。今回、本CjMDR1の植物体における生理学的役割をさらに明らかとすることを目的とし、CjMDR1の発現を変化させた形質転換オウレン植物体の作成を試みた。まずCjMDR1を過剰発現させることを試みたが、得られた植物体を解析した結果、予想に反して根、葉柄、葉におけるCjmdr1 mRNAの発現が低下していることを認めた。この発現の低下は安定していたことより、現在、ベルベリンの蓄積に対する効果を検討している。