抄録
目的 アントシアニンは高等植物に広く存在する色素であり、植物細胞内においては液胞に蓄積される。どのような機構でアントシアニンが液胞内へ輸送されるかについては、未だはっきりと分かっていない。本研究では、塊根全体にアントシアニンを蓄積する紅芯ダイコン(Raphanus sativus (北京水ダイコン))を用いて、アントシアニンの液胞輸送機構の解明を目指している。
方法・結果 まず、輸送基質となりうる分子の構造を明らかにするため、塊根を柔組織と形成層に分けて、それぞれに含まれるアントシアニンを2% TFAを含む50% CH3CN aq.で抽出しHPLC分析を行った。その結果、両組織で,含まれるアントシアニン分子種の比率が異なることが分かった。両組織から主要なアントシアニン分子を単離精製し、構造決定を行なった。全ての分子がペラルゴニジンを母核として、数個のグルコースや有機酸が結合していた。また、既報の構造とは異なり、ほとんどがマロニル化されていた。7種類単離したうち、4種が新規のアントシアニン分子であった。形成層で主要なアントシアニン分子は、柔組織のそれよりも高度にアシル化・配糖化を受けていることが分かった。構造上の特異性と生理的意義についても議論したい。