抄録
植物に蓄積される主要なプリンアルカロイドは、カフェイン(1,3,7-トリメチルキサンチン)またはテオブロミン(3,7-ジメチルキサンチン)である。カフェイン生合成の最終段階には3回のメチル化反応が含まれる。キサンチン骨格のN-7位、N-3位のメチル化の後にテオブロミンが合成され、さらにN-1位がメチル化されてカフェインとなる。我々は、植物に蓄積されるプリンアルカロイドの違いは、存在するN-メチルトランスフェラーゼの基質特異性の違いを反映していることを昨年の本大会で報告した。
本研究では、カフェインを蓄積するチャ(Camellia sinensis)に存在し、N-3位とN-1位のメチル化の両方を触媒するカフェインシンターゼ(TCS1)とテオブロミンを蓄積するCamellia ptilophyllaに存在し、N-3位のメチル化のみを触媒するテオブロミンシンターゼ(PCS1)に着目した。これらのアミノ酸配列は91%という非常に高い相同性を示す。この2つの酵素の基質特異性の違いを決定する領域を特定することを目的として、大腸菌の発現系を用いて変異型酵素を作製し、解析した。その結果、TCS1の全369個のアミノ酸のうち、140-287番目の領域が基質特異性を決定していることが示唆された。その中でも、TCS1の221番目のアルギニンが、基質特異性の決定に大きく関与することがわかった。