抄録
光化学系IIの集光装置は、コアアンテナ(CP43/CP47)、マイナーアンテナ(CP29/CP26)、メジャーアンテナ(LHCII)によって構成される。このうちマイナーアンテナには、大部分のキサントフィル・サイクル色素が結合されていることから、集光よりも過剰エネルギーの熱散逸に関与するとの報告があるが、その詳細は明らかではない。そこで本研究では、RNAi技術を用い緑藻クラミドモナスのマイナーアンテナの一つであるCP29 の光環境適応における役割を検討した。まず、作成したRNAi株におけるLhcb4遺伝子のmRNA量が野生株の3%以下に抑制されていることを確認した。また、CP29タンパク質の発現も著しく低下していることがウェスタンブロッティングによって明らかとなった。次に、強光および弱光条件下で培養した細胞を用いて、CP29発現抑制の効果の生理生化学的な検討を行った。その結果、弱光下では野生株と差が見られなかったのに対し、強光下で培養したRNAi株では最大量子収率の低下とD1タンパク質の蓄積量の低下が見られた。これらのことからCP29の発現抑制が光化学系IIの損傷をもたらしたことが明らかとなり、CP29は強光下における光化学系IIの防御に必要であることが示唆された。ゲノム情報から明らかになってきた緑藻型集光装置の特徴と併せ、報告する。