日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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緑藻クラミドモナスLHCIIの強光条件における構造変化
*瀬口 武史早川 尚吾皆川 純
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p. 421

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抄録
緑藻クラミドモナスは高等植物と同等の光化学系を持っているが、高等植物では生育に深刻な影響が出る強光条件(約2000μE/m2/s)にも順化し、非常に速く生育することができる。異なる光環境下(10-5000μE/m2/s)で細胞を生育させると、環境光の強さと光阻害の程度、NPQのレベルに相関が見られるため、強光下での速い生育は効果的なNPQの誘導によって可能になったと考えられる。本研究は、この強光下のNPQ誘導メカニズムを明らかにするため、まず蛍光誘導の詳細な解析を行った。その結果、強光培養細胞におけるNPQは、qE(ΔpH依存)ではなく主にqT(ステート遷移)に起因するものであることが示唆された。そこで、このqT誘導能の高い集光装置を詳細に調べるため、強光培養細胞からLHCII画分を単離した。ゲル濾過クロマトグラフィーにより複合体の大きさを解析したところ、弱光条件と比べ高い三量体/単量体比を示すことが明らかとなった。以上の結果から、強光に順化したクラミドモナスは三量体比の高いLHCII複合体を持つため、ステート遷移によるNPQを誘導しやすいことが示唆された。現在、LHCIIの高次構造とステート遷移の関係を明らかにするため、抗リン酸化抗体を用いた免疫化学的解析を進めており、その結果もあわせて報告する。
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© 2004 日本植物生理学会
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