抄録
植物の生体膜を構成する多価不飽和脂肪酸の過酸化に起因するタンパク質の修飾を、過酸化脂質付加体を認識するモノクローナル抗体を用いたウエスタンブロッティングにより調べた。反応系として、モデルタンパク質(BSAまたはRubisco)、不飽和脂肪酸(植物生体膜の主要な構成成分であるオレイン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、またはリノレン酸(18:3)のメチルエステル化合物)、および酸素ラジカル発生系(Fe(III)/アスコルビン酸/O2)を用いた。結果、リノレン酸を用い37℃、6時間インキュベートした時に、多量のマロンジアルデヒド(OHCCH2CHO)、アクロレイン(CH2:CHCHO)、クロトンアルデヒド(CH3CH:CHCHO)のタンパク質付加が確認された。さらにキュウリ緑葉からタンパク質を抽出しウエスタンブロッティングを行ったところ、過酸化脂質修飾タンパク質が検出され、それらのタンパク質の内部アミノ酸配列を調べた結果、いずれも葉緑体に局在するタンパク質であることが分かった。以上のことから植物中ではリノレン酸が主要なタンパク質修飾源となっており、リノレン酸が最も多く含まれる葉緑体で過酸化脂質によるタンパク質の化学修飾が多く発生していることを示唆している。