抄録
我々は高等植物の重力屈性の分子機構を明らかにするため、シロイヌナズナから重力屈性変異体を多数単離し解析を行っている。shoot gravitropism 2(sgr2)は劣性の変異体で、花茎と胚軸の重力屈性に異常を示す。花茎内皮細胞中のアミロプラストは、重力感受の平衡石として機能すると考えられているが、sgr2ではアミロプラストの正常な沈降が見られなかった。SGR2は、ウシのホスホリパーゼA1に似たタンパク質で、主に液胞膜に局在しており、その構造や機能に関与することで重力感受に影響していると考えられる。しかし、具体的な機能は未知である。そこで我々は、SGR2と相互作用する因子を得るため、sgr2-1花茎の重力屈性異常を抑制するkiritsu(krt)変異体を複数単離した。その中の3系統krt28、171、173は、半優性でいずれもsgr2-1の花茎の重力屈性異常を部分的に抑制した。さらに、これらの系統では内皮細胞中のアミロプラストの動態もほぼ正常に回復していた。これらの結果から、KRT遺伝子はそれぞれ液胞の機能に関与し、アミロプラストの動態に影響するものと考えられる。現在、マップベースクローニングにより、これらの遺伝子の単離を試みている。