抄録
イネ種子の発芽時において胚盤組織は、胚乳に貯蔵されたデンプンの分解、吸収・利用に関して重要な役割を果たすことが知られている。以前、我々は発芽イネ種子胚盤組織において発現する蛋白質のプロテオーム解析について報告した。本報告においては、発芽が進むにつれて胚盤組織における発現が増加するタンパク質およびABAによって誘導されるタンパク質についてさらに詳細にプロテオーム解析を行った。胚盤組織において発芽の進行(吸水6日間)とともに発現が増加するタンパク質には、多くの解糖系酵素、クエン酸サイクル−ATP合成酵素、ショ糖合成関連酵素、ABA誘導性タンパク質が含まれていた。続いて、ABAの効果を調べるために、吸水3日目からABAを添加し、3日間ABA処理を行った。ABA処理によって、胚盤組織の乾燥重量およびタンパク質含量の増加が観察された。興味深いことに、ABAによって誘導されるタンパク質の多くは経時的に発現が増加するタンパク質と一致しており、ABA誘導性タンパク質とともに解糖系酵素、クエン酸サイクル−ATP合成酵素、ショ糖合成関連酵素が含まれていた。これらの結果は、ABAが胚盤組織機能を促進する役割を持っていることを示唆している。さらに、イネ穂発芽変異系統を用いた解析結果についても報告する。