抄録
理研GSCでは、遺伝子機能を同定する為に5万を超えるシロイヌナズナの突然変異体を生成している。変異体を元に遺伝子機能を推定するには、表現型解析の精度が重要になる。しかし、大量生成される変異体候補の個体をスクリーニングする手法は目視による手作業が一般的で、微妙な形質の変化を検出することは困難である。また主観判断の為に変異体の識別基準が曖昧であり、表現型の記述も定性指標に偏りがちである。本研究では、シロイヌナズナ変異体の3次元表面形状計測データからin silicoで表現型データを定量化し、変異体と野生型の明確な識別基準に基づく、精度の高い変異体スクリーニング手法の確立を目指している。
本報告では、複数個体を形状計測・形質定量化する時に起こる諸問題について述べ、網羅的に計測・定量化する為のシステマティックな表現型解析手法を紹介する。具体的には、レーザレンジファインダを用いてシロイヌナズナの表面形状を計測し、コンピュータ中に3次元表面形状モデルを再構築する。このモデルの3次元形状データに画像処理手法を応用する事で、葉や葉柄に領域分割したり葉片面積等の形質定量化が可能になる事を示す。本提案手法は、従来手法である2次元画像を基にしたスクリーニング手法と比較して、より正確な形状形質の定量化が実現可能である。